健康増進に取り組む施設
前回は温泉を利用して地域として健康に取り組んでいる温泉地の事例をまとめてみました。今回は温泉を利用して健康の増進に取り組んでいる施設について、いくつかの事例を紹介します。
健康増進に取り組む施設
伊香保バーデハウス ベルツの湯(伊香保温泉・群馬県)
群馬県の伊香保温泉は、鎌倉時代から湯治場として発展してきた歴史の永い温泉地です。温泉が流れる石段に沿って、旅館街が展開する情緒深い温泉地として知られています。また、わが国の温泉医学の父と称されるベルツ博士(明治時代に西洋医学普及のために東大教授として国が招聘したドイツ人医師)が、研究して指導した温泉地としても知られています。
伊香保温泉の泉質は、鉄分を含んだ硫酸塩泉で、茶褐色となる特徴があります。古くから「子宝の湯」と称され、婦人病や貧血などに効果が高いと言われています。
温泉街の入口付近に、伊香保バーデハウス ベルツの湯があります。この施設は、全身浴の他に、寝湯や打たせ湯など、様々な温泉入浴法と飲泉所を完備した温泉館となっています。中でも、温冷交代歩行浴や鯨噴浴という特殊な入浴法と飲泉ができることが、この施設の大きな特徴となっています。また、この施設の経営者は医学博士で温泉療法医でもあるので、温泉への入浴方法や飲泉の方法などについて指導を受けることも出来るようになっています。
特に温冷交代歩行浴は、この施設のオーナが自らクナイプ療法を発展させ考案したもので、血液循環を改善させる作用があり、温泉と冷水交互の反復温度刺激と小石の足裏への刺激から、疲労回復に効果があります。また、慢性便秘症や自律神経失調症、不眠症などに高い効果があり、冷え症や更年期障害にも効果が期待できるということです。
クアハウス碁点(碁点温泉・山形県)
山形県の碁点温泉は、昭和40年に国民保養温泉地に指定されています。クアハウス碁点では、温泉を健康づくりに役立てています。
この施設では「ヘルスアッププラン」という独自のシステムを実践しています。このプランは2泊3日が基本となっており、初日はチェックイン時に問診票に記入し、例えばダイエットや腰痛への対応など、各人の希望を聞き、その後ゆっくりと温泉入浴で身体をやすめます。2日目は体力測定を実施して、個人の体力に合わせた水中運動やウォーキングなどがトレーナーの指導の基で行われます。3日目の午前中にチェックアウトとなりますが、滞在中の食事はすべて栄養士の作成したヘルシーメニューが提供されます。このように温泉を利用した運動と食事の両面から健康維持や健康増進に取り組んでいるのです。
ホテルサンバレー那須アクアヴィーナス(那須温泉郷・栃木県)
栃木県の那須温泉は、1300年の永い歴史を持つ温泉地です。近年は、那須湯本・新那須・八幡・大丸・北・弁天に三斗小屋を加え、那須温泉郷を形成しています。多彩な泉質と豊富な湯量が那須温泉郷の大きな特徴となっています。那須温泉発祥の地にある「鹿の湯」では、浴槽が4つに分かれ四段階の温度差浴が伝統的に行われてきました。
近年、新那須温泉に新しい温泉利用施設ができて脚光を浴びています。その一つとして、ホテルサンバレー那須と併設されている入浴施設のアクアヴィーナスがあります。
この施設は広大な敷地を持ち、洋風・和風・オリエンタル風・コテージなど8カ所のホテルをはじめ、チャペルや、スポーツ施設、温泉入浴施設等が森の中に点在しています。
中でも入浴施設のアクアヴィーナスには、22種類の風呂が設置してあり、好みに応じて様々な楽しみ方と健康づくりが可能になっています。特に一周50メートルの流れる露天風呂は特徴があり、水流に乗って歩くことで楽しみながら健康増進が図れるようになっています。
また、宿泊客は各施設の浴場も利用できるようになっていて、トータルすると38種類の風呂を楽しむことが出来、これらを巡る間に自然に森林浴ができるように工夫されています。この施設では、滞在型の健康づくりのシステムを検討中ということで、近い将来より充実していくことでしょう。
さんだネスパ(フラワータウン三田温泉・兵庫県)
阪神地区のベッドタウンとして急速な発展を遂げている兵庫県の三田市。兵庫県などが中心となって進めてきた神戸三田国際都市開発事業のニュータウン造成中に温泉が湧出しました。この温泉を利用して平成10年11月に「さんだネスパ」がオープンしました。
この施設は日帰りの温泉施設ですが、単なる温泉入浴に留まらず、健康維持や健康増進をコンセプトに、新湯治場と銘打って、アクアビクス・リラクゼーション・シェイプアップなど、有料無料の様々なプログラムを実施しています。ニュータウンの中にある施設のため、乳幼児などの子供連れで楽しめるプログラムも完備され、近隣住民のリピート利用率が高いそうです。
有料のスパプログラムは、90分が基本で、インストラクターの指導による水中運動後は、ラベンダーやユーカリ等の精油を利用したアウフグースサウナ(65℃の低温サウナ)を楽しみ、最後は静かな音楽と香りに包まれてリラクゼーションできるシステムになっています。
このほかにも、北海道登別温泉の第一滝本館では、温泉療法医の監修で、効果的な温泉の入浴方法などを解説した小冊子を作成しています。同館には、5種類の泉質と28カ所の温泉浴槽があり、それを活かして積極的に健康づくりに取り組み始めました。
このように、今回紹介できなかった施設も数多く存在します。温泉を利用して健康づくりに取り組んでいる施設は、徐々に増えてきているのです。
21世紀に向けて、温泉を利用してより健康な生活を送ることができることを願っています。